朝9時。いつも通りに仕事が始まった。
あれやこれやに追われる中、何か視界の隅でうごくものがあった。
デスクトップの画面右側でマウスのカーソルを動かしていたところ、反対側、デスクトップの枠の左端にいたのは、小さな、チャコールグレー色のクモ。
自分の部屋なら虫の気配だけで凍りついて、見つけたら飛び退くけど、職場ではなんだか大らか。
「わ、クモだ」と思って、じっくり眺める余裕はないから放っておいたら、視界を横切るようにデスクトップ右端まで歩いていって、机に下りた。
それから少し目を離したら見失ったので、前の席の先輩の机に行ったかもしれない。（知らぬが仏）
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たまーに、無視できない大物が職場に現れて、女性陣を中心にワーワーキャーキャー騒ぐことになる。
皆仕事そっちのけで、お祭り騒ぎ。ほんとうに虫が苦手な人には悪いけど、私はわりとワクワクしてしまう。
皆で怖がって、机を離れるという同じ行動をとる。一緒になって、虫をやっつけようとする。
この一体感がなんかいい。
ふだんは、自分が仕事に追われて心の余裕をなくしているときでも、周囲の誰かは笑ったり冗談を言ったりしている。（だからこそ救われる、正気に戻れるということもあるけど…
そういう時に、ちょっとした疎外感を感じる。
改めて書くほどのものではないけど、虫が現れて騒ぎになると、皆同じような気持ちで仕事してんじゃないかなあ、と思ってこっそりホッとしている。
