雑貨屋さんで、お年を召された女性が地面に杖を落とすのを見た。
とっさに拾い上げて渡したら、びっくりした顔で何度もお礼を言われた。
なんとなく、余計なことをしたかな…と思った。
杖をつきつき、一人で好きなとこに出かけるくらい元気な訳だし、家事をする中でも身をかがめることなんてたくさんあるだろう。
つい手が出たのには理由がある。
《1.バドミントンの羽根》
中学生のときバドミントンをやっていた。
床に落ちた羽根を拾い上げるのは、とても体力を消耗することだった。
10代が何を言うか、という感じだけど、試合中、汗をかいてはあはあ言ってる中、地面から羽根を拾うのはバカにならないエネルギーを使う。
身をかがめずに、ラケットのフチを使って拾い上げるテクニックを、部活仲間はみんな習得していた。
試合中、ちょっとでも体力を温存しておこうという気持ちだった。
たぶんプロの選手がやることだと思う。(こないだアジア大会の試合中継を見たけど、どうだったっけな…)
《2.お金を拾う話》
小中学生のとき、さくらももこさんのエッセイにハマっていた。
その中で、落ちているお金を拾うことについての話を読んだ。
いま手元になく、話の大筋は忘れたけど、「一円玉を拾い上げるエネルギーは一円に値するのか」というような内容があった。
とても新鮮な視点で、子供心に「面白いなあ」と思い、同時に「ものを拾う行為は思った以上にエネルギーがいるんだ」と刻み込まれた。
そんなわけで私は、「腰を折って何かを拾い上げる」ことの難儀さを日頃から意識している。
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先日はスーパーで、ミセスが落とした鍵を拾い、少し追いかけて渡した。
このときは後味よかったなあ。
鍵を無くしたら大変だし、落ち込む。
お礼を言われて、つい「よかったです〜」なんて言ってしまった。